不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

「さ、そろそろバルセロナ港へ向かおうか」
「はい」

 エスコートするように差し出された大きな手に、自分の手を重ねて歩きだす。

 クルーズ船に乗り込んだら、いよいよ新婚初夜が待っている。

 改めてそう思うとドキドキして、私はあまり斗馬さんと目を合わせられないのだった。


 しかしあろうことか、クルーズ船に宿泊したその夜、私は夕食と入浴を済ませるなり爆睡してしまった。

 ハッと目を覚ました時にはカーテンの隙間から明るい日差しが差し込んでいて、すでに着替えを済ませた斗馬さんに『おはよう』と爽やかに挨拶された。

 移動と観光で疲れたのだろうと斗馬さんは優しく言ってくれたけれど、なんとなく残念な気分でルームサービスの朝食を食べた。

 クロワッサンやベーコンのグリル、スクランブルエッグ、サラダ、フルーツ、ヨーグルトなど、定番の洋食メニューだ。

 海に臨むテラスで潮風を感じながらいただく朝食は、普段の何倍も美味しい。

 ……はずなのだけれど、私の表情は冴えない。

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