不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「いい旅になりますように」
岸から離れていく船に大きく手を振りながら、誰にともなく呟く。
「なりますよきっと。千帆さんが企画したんですから」
隣から、優しい声が降ってくる。顔を上げると、同僚の佐藤亮太くんがサラサラした長い前髪の隙間から微笑みを覗かせた。
彼は私と同い年。今年の春に中途入社したばかりなので一応後輩で、私がマンツーマンで教育係を務めている。
身長は一七五センチ程度で、細身で色白。前髪のせいで表情がわかりづらくちょっぴりミステリアスな雰囲気はあるものの、話してみると気さくでいい人だ。
私の提案する企画を、いつも過剰なまでに褒めてくれる。
「ありがとう。次は佐藤くんも企画を通さないとね」
「はい。いつまでも千帆さんにおんぶに抱っこじゃ情けないですもんね」
「あとその敬語。同い年なんだから別になくてもいいのに」
「すみません。千帆さんって社長令嬢だからなんか緊張してしまって」
佐藤くんが苦笑して首の後ろを撫でた。