不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
確かに、社長令嬢だからと腫れ物に触るように私と接する社員は彼のほかにもいる。
でも、私はいわゆるコネ入社ではなく、一般の入社試験を受けてこの会社に入った。斗馬さんの影響で、純粋に船に携わる仕事がしたかったからだ。
父もそんな私の意思を汲み、人事には口を出さず実力で私が入社するのを見守ってくれた。
そして二年前、念願の営業企画部に異動になり、充実した日々を送っている。
「それでも、仕事は仕事。私がなにか間違ってたらちゃんと教えてほしいし、あまり特別扱いしないでほしい」
「……わかりました」
佐藤くんの返事に「うん」と頷く。船はいつの間にか遠ざかり、小さくなっていた。
帰社してからひとつ会議を終えると、もう退社時間の午後六時だった。
同僚たちが「お疲れ」と言って次々帰っていく中、斜め向かいのデスクで真剣にパソコンを睨む佐藤くんの姿が目に入る。
帰り支度を済ませた私はバッグを持って席を立ち、彼の背後から声をかけた。
「帰らないの?」
「あ、千帆さん……企画書、もうちょっと詰めたくて」
佐藤くんは一度こちらを振り返り、またすぐパソコンに向き直る。