不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

『あれは病みつきになるな、白くてやわらかくて……背徳的なうまさだった』

 自分がとんでもない思い違いをしていたかもしれないと悟ると同時に、結婚式で斗馬さんが語っていた天使についての発言を思い出す。

 私はてっきり女性の艶めかしさを表現したのだと思い込んでいたけれど、食べ物についての感想だと考える方が、よっぽど自然だ。

 斗馬さんは私を裏切っていなかったの? だったらどうして彼も否定しなかったの?

 混乱に次ぐ混乱で、私は口元を震える手で押さえ、黙り込む。

「あの時、合コンに乗り気じゃなかった斗馬を強引に誘っちゃったお詫びに、そのチーズをテイクアウトしてもらったんだ。文字通り〝天使の持ち帰り〟ってわけ」
「そんな。じゃあ、私、ありもしない罪で斗馬さんをずっと責めて……」

 斗馬さんの疑いが、すべてが晴れたわけじゃない。それでも、私を一番苦しめていた天使の存在が消えた今、罪悪感で胸がいっぱいになる。

「あっ、ごめん。そろそろ行かなくちゃ」

 夕飛さんが慌てたように腕時計に目を走らせた。私もハッと我に返り、頭を下げる。

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