不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「『愛犬と同室・安心クルーズ』か……悪くないね。ペット可の旅行、最近ニーズ高まってるから」
「ですよね。お客さんからの問い合わせも多いので、やってみようかと」
「いいと思う。なにか手伝おうか?」
「いえでも、今日はもう時間過ぎてますし……千帆さん、新婚なんだから早く帰った方がいいんじゃないですか? ご飯作ったりとか」
腕時計に目を走らせた佐藤くんが、遠慮がちに尋ねてくる。
仕事モードだったのですっかり自分の状況を忘れていたが、そういえば私は新婚だった。
でも、帰りたくない。まして、斗馬さんのために甲斐甲斐しく夕飯を作って待っているなんてもってのほかだ。
眠らせていた斗馬さんへの怒りがメラメラと再燃するのを感じつつ、平静を装って佐藤くんに微笑みを向けた。
「大丈夫。ほら、夫も忙しい人だから外で食べることが多くて」
「あ……そうか。剣先財閥の末裔の、すごい方ですもんね」
「う、うん」
肩書きはともかく、中身は許嫁の私以外と関係を持つような不誠実な人だけどね――。
心の中で呟いただけで、ズキッと胸が痛くなる。
余計に帰りたくなくなった私は、進んで佐藤くんの企画書を手伝い、結局夜八時まで残業した。
作業はまだ途中だが、さすがにお腹が空いてきたので今日のところは一旦終わりにする。