不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

「ごめんなさい」
「いや、最初に離婚話をされた時に、もっときみとちゃんと話をするべきだったんだ。他にも気になることがあるなら全部聞いてほしい。千帆の不安はすべてなくしてやりたい」
「あっ、じゃあ、ひとつだけ……。中華料理店で一緒にいた女性は誰なんですか? 私、あの時友達と同じ店にいたんです」

 斗馬さんを信じられるようになった今なら、恐れずに疑問をぶつけることができた。きっと、あの女性と一緒にいたことにも事情があるはずだ。

「そうだったのか。彼女は佐藤美鶴さんという名で、事故の件で改めて俺に感謝を伝えてくれたのと、元恋人の夕飛に――」
「えっ!? 佐藤美鶴さん?」

 信じられない名前が飛び出し、私は思わずガバッと斗馬さんから身を離した。

 佐藤はこの日本でかなり多い苗字とはいえ、美鶴という下の名前まで同じというのは、偶然の一致ではないだろう。

「知っているのか?」
「は、はい。私の同僚の佐藤くんの妹さんです」
「佐藤って……千帆にちょっかいを出そうとしていた、あの?」

 にわかに信じられないといった様子で、斗馬さんが尋ねる。私も、まさか斗馬さんと会っていたのが佐藤くんの妹だったなんて、夢にも思わなかった。

 でも考えてみれば、妹さんが外出に慣れたらいつか斗馬さんにお礼を言いたいのだと、佐藤くんから聞いていたじゃない。

 どうしてあの時、その可能性を思いつかなかったんだろう。

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