不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

「すみません、遅くまでつき合わせちゃって」
「ううん、いい企画になりそうだから楽しみ。じゃあごめん、お先に」

 斗馬さんへの当てつけのように残業をしてしまった反面、あまり遅くなって心配をかけるのもいい気分ではない。

 佐藤くんに挨拶をして椅子から立ち、斗馬さんに帰宅時間を知らせようとスマホを操作し始めたその時。

「あのさ、千帆ちゃん」
「えっ?」

 佐藤くんに妙な呼び方で引き留められ、きょとんとして振り向く。

 スッと私の目の前に立った彼は、長い前髪をかき上げてニコッと笑った。

「ありがと。助かった」
「ど、どういたしまして」

 敬語を抜いてもいいとは言ったけれど、急だったので少々面喰らう。

 それに、敬語を抜いたとたん、表情や態度まで今までの彼とは違う印象になったような……。

「今度お礼させて? ふたりでメシでも行こう。おごるから」
「えっ、いいよそんな、気を使わないで」

 顔の前で手のひらをブンブン振って遠慮した。

 同じチームの仲間だから、仕事ならいくらでも手伝う。だけど、〝ふたりでメシ〟はあり得ない。

 いくら斗馬さんに腹が立っていたって、私が彼の妻であることに変わりはない。既婚者の身でほかの男性と食事するなんて、ハレンチな行為だ。


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