不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「気を使ってるわけじゃないんだけど、まぁいいや。また誘う。お疲れ」
「お疲れ様……」
突然別人のようになった佐藤くんに動揺してついぼうっと返事をした直後、手の中でスマホが震える。画面に表示されたのは斗馬さんの名で、ドキッと心臓が高鳴った。
「は、はい」
《俺だ。まだ仕事か?》
「いえ、ちょうど今出ます」
答えながら早足でオフィスを後にする。
気のせいかもしれないが、出て行くまでずっと佐藤くんの視線を感じた。
《だったらタクシーで帰るんだ。この時間にひとりで歩くのは危ない》
「平気ですよ。まだ人通りは多いですし」
ビルの外に出て、周囲をキョロキョロ見回しながら言った。
日本橋のオフィス街には私と同じ会社帰りのOLやサラリーマンがあふれている。さすがにこの状況で危険な目に遭うことはないだろう。
《千帆、俺はご両親から、きみの人生を預けられた身だ。万が一なにかあったら、ご両親に顔向けできない。わかったらタクシーで帰るんだ。いいな》
「はい……わかりました」
夫としての責任感が滲んだ彼の言葉になにも言い返せず、素直に返事をした。