不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす
「斗馬さん、この香りは……?」
「俺が作った夕食だ。もう支度が出来てるから、手を洗っておいで」
「斗馬さんが作ったんですか?」
信じられなくて、目が丸くなる。彼の実家にはお抱えの料理人がいたし、仕事の忙しい彼に料理のスキルがあるとは、まったく思っていなかったから。
「そんなに驚くなよ。こう見えて息抜きに料理をするのは好きなんだ。惚れ直してもいいぞ?」
後半だけ囁き声になった彼が、甘い目をして私の顔を覗く。途端にパッと顔を背けたけれど、頬がじわじわ熱くなった。
「私、手を洗ってきます……っ」
「ああ。その間に料理を並べておくよ」
余裕の笑みが憎たらしい。
私はパタパタと廊下からパウダールームに逃げ込み、激しい鼓動で上下する胸に手を置いた。
簡単に絆されたくないと思っているのに、斗馬さんはやはりなかなかのやり手だ。
女心を揺さぶる術をたくさん持っているのは、経験値が多い証拠。許したくない方に気持ちが傾く一方で、彼の策に翻弄されている自分が情けない。