毒令嬢と浄化王子【短編】
誰かを助けるために動かせば別の誰かが犠牲になるような状態だ。
「まずは支えを作るんだっ」
カールさんが状況を冷静に分析して指示を出す。
ナターシャちゃんの上に材木が落ちてこないように囲いを作ろうというのだ。
ナターシャちゃんはよほど挟まれているところが痛いのか、それとも不安なのか激しく泣き続けている。
「すぐ助けてやるからなっ!」
その声に肉屋の親父さんがカールさんの指示を無視してナターシャちゃんの上の材木を必死に押しのけようとしている。
「落ち着け、そのまま動かそうとしてもまず無理だ」
興奮して冷静な判断ができないでいる肉屋のおじさんの手をカールが止めた。
「あ、ああ……ああ」
何かに憑りつかれていたかのようだったおじさんが落ち着き、泣き叫んでいるナターシャちゃんの頭をそっと撫でている。
「ナターシャ、皆さんが力を合わせて助けようとしてくれている。もうちょっと我慢しておくれ……」
「父さん……」
泣きながらおじさんの手をぎゅっと握って痛みに耐えるナターシャちゃん。
「そら、力を合わせてどかすぞ!」
「あぶない、それを動かしたらっ」
ぐらりと反対側の材木が転がり下に落下する。
がつっと、材木をどかす作業をしていた男性の肩をかすめて材木がドスンと地面に転がった。
「大丈夫かっ」
「ああ。……よほど慎重にどかさないとどこが新たに崩れるかわからないな」
「子供の周りにまずは支えを作る。それから1カ所ずつ慎重に取り除いていくんだ。他に崩れてもそこに人さえいなければ問題ないだろう。人も足りない。誰かほかにも手伝える人がいれば声をかけてくれ」
カールが声を張り上げて指示を出している。野次馬の何人かが人を呼んでくると走り出した。必要なものがあるかと尋ねている者もいる。
大切な街の人たち……。
皆が力を合わせて……。
ナターシャちゃん自身も痛みに耐えて頑張っている。
私は……私は……。
この大切な場所を失いたくない。
■
指先が小刻みに震える。
笑顔で話しかけてくれる親切な街の人たちが……。
バケモノと私を恐怖の目で見る姿を想像すると、悲しくて胸が潰れそうだ。
だけれど……。
だけれど!
分厚い手袋を外すと、水仕事で少し荒れてはいるけれど、白くて火傷の跡一つない手が現れる。
「え?火傷の跡を隠していたんじゃ……」
「まずは支えを作るんだっ」
カールさんが状況を冷静に分析して指示を出す。
ナターシャちゃんの上に材木が落ちてこないように囲いを作ろうというのだ。
ナターシャちゃんはよほど挟まれているところが痛いのか、それとも不安なのか激しく泣き続けている。
「すぐ助けてやるからなっ!」
その声に肉屋の親父さんがカールさんの指示を無視してナターシャちゃんの上の材木を必死に押しのけようとしている。
「落ち着け、そのまま動かそうとしてもまず無理だ」
興奮して冷静な判断ができないでいる肉屋のおじさんの手をカールが止めた。
「あ、ああ……ああ」
何かに憑りつかれていたかのようだったおじさんが落ち着き、泣き叫んでいるナターシャちゃんの頭をそっと撫でている。
「ナターシャ、皆さんが力を合わせて助けようとしてくれている。もうちょっと我慢しておくれ……」
「父さん……」
泣きながらおじさんの手をぎゅっと握って痛みに耐えるナターシャちゃん。
「そら、力を合わせてどかすぞ!」
「あぶない、それを動かしたらっ」
ぐらりと反対側の材木が転がり下に落下する。
がつっと、材木をどかす作業をしていた男性の肩をかすめて材木がドスンと地面に転がった。
「大丈夫かっ」
「ああ。……よほど慎重にどかさないとどこが新たに崩れるかわからないな」
「子供の周りにまずは支えを作る。それから1カ所ずつ慎重に取り除いていくんだ。他に崩れてもそこに人さえいなければ問題ないだろう。人も足りない。誰かほかにも手伝える人がいれば声をかけてくれ」
カールが声を張り上げて指示を出している。野次馬の何人かが人を呼んでくると走り出した。必要なものがあるかと尋ねている者もいる。
大切な街の人たち……。
皆が力を合わせて……。
ナターシャちゃん自身も痛みに耐えて頑張っている。
私は……私は……。
この大切な場所を失いたくない。
■
指先が小刻みに震える。
笑顔で話しかけてくれる親切な街の人たちが……。
バケモノと私を恐怖の目で見る姿を想像すると、悲しくて胸が潰れそうだ。
だけれど……。
だけれど!
分厚い手袋を外すと、水仕事で少し荒れてはいるけれど、白くて火傷の跡一つない手が現れる。
「え?火傷の跡を隠していたんじゃ……」