毒令嬢と浄化王子【短編】
 籠を持っているカールさんの顔を見る。
 カールさんが真っ赤な顔をしている。
 私も頬がかぁっと熱くなる。
「ち、違います!あの、カールさんはこ、恋人とか、そんなんじゃなくて、そ、それに荷物持ちをさせようと思ってもいなくて……」
 必死に否定すると、パン屋のおかみさんがまた、私の背中を叩いた。
 その横で、カールさんがおかみさんの旦那さんに背中を叩かれている。
「おいおい、頑張れよ、色男」
 それから、街の人たちに次々と背中や肩を叩かれている。
「ミリアちゃんを泣かせたら許さないぞ」
「さっきの堂々としたリーダーシップはどこいった」
 色々と言われているようだけれど、私の耳には届かないようにカールさんの耳元でささやいてその場を去っていく。
 えっと……。
「カールさんも、街の人たちと仲良くなれたようですね……。よかったです。あの、たぶん、もう私が街を案内しなくても一人でも大丈夫ですよ」
 街の人たちは親切だし、この騒ぎでカールさんの顔もみんなに覚えてもらえただろう。
 大好きな街……。
 毒のことを知ったのに、同じように私を受け入れてくれる……。ますます大好きになった街をカールさんにも好きになってもらいたい。
「え?僕は、ミリアの案内が必要だよ?ずっと、ずっと、ずーっと、必要だよ!」
 カールさんはそんなに人見知りなのでしょうか?
 首をかしげていると、街の人たちが次々に籠の中に色々なものを差し入れてくれます。
 ……うん、私の力じゃ家まで持って帰れそうにありません。今日は……カールさんに運ぶのをお願いしてもいいかな。
 さすがに図々しすぎる……かな……。

「ハーバン、成功した。偶然、偶然ミリアに会うことができたよ!」
 ハーバンが呆れた顔をしている。
「……偶然ねぇ。まぁ、あの街に何日かに1度足を運ぶという情報はありましたし、待っていればいつか偶然会えるとは思いましたが、1日目で偶然会えてよかったですね」
「うん、そうなんだ。やっぱり、僕とミリアが出会ったのは運命だと思うんだ!」
 ハーバンがまた呆れた顔をしる。
「はー。相変わらずすごく可愛くて、あ、僕は別に容姿のことを言っているんじゃないよ?あ、もちろんミリアは見た目も可愛いんだけれど、そうじゃなくて仕草とか言動とか……なんかすごく可愛いんだ。困った顔したり笑ったり照れたり……信じられる?」
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