公爵の娘と墓守りの青年

「えっ、俺ですか?!」

「今の話を聞いていたら分かるだろう? カエティスは墓地から離れられない。ネレヴェーユ様は女神様。魔狼は外見で目立ち過ぎ。ということは、ほら、君しかいないよね」

にっこりと有無を言わせない威圧的な笑みをエマイユは浮かべ、イストに言う。

「……何で最初だけ、トーイ様がよく使っていらしてた『嫌いな臣下と話す王様』風に喋るんですか」

「うーん、君のこと嫌いとかはないんだけど、やっぱりアレだよねー? ついからかいたくなるんだよねー」

「俺はすっごくからかわれたくないんですけど」

むすっとした表情で言い、イストはじっとエマイユを見る。

「そういう星の下に生まれたんだよ、きっと。さ、とにかく行くよ、イスト」

「……はい」

まだ何か言いたげな顔をするイストだが、仕方なさそうに従った。

「じゃあ、カエティス、ネレヴェーユ様、魔狼。行って来るね〜」

「うん。二人共、気を付けてね」

イストを引き連れたエマイユにカイは手を振った。
エマイユに無理矢理、手を引かれたままのイストが切なそうな表情でカイを見つめていた。

< 172 / 482 >

この作品をシェア

pagetop