公爵の娘と墓守りの青年
金色が所どころ混じっている赤い髪を掻き上げ、カイは立てた膝に肘を置く。
「しかも、ウェル君の名前も言ってたけど……。俺にウェル君を守って欲しいってことだよね。一体、誰だろう。前の王様は知ってるけど、他の王族は知らないしなぁ……」
困ったように眉を寄せ、カイは空を見上げる。
虫も動物も眠る夜中の空はとても静かで暗い。
暗い故に、その闇に乗じてならず者達がやって来たり、死者達の嘆きや悲しみの声が聞こえる。
時々、嘆きとは別の世間話のような声もする。
今もざわざわとたくさんの声が聞こえる。
その中に、気になる声をカイは耳にした。
『……モゥスグ、モウスグ、王ゾクガ死ヌヨ、カエティス』
不明瞭な声と不安を掻き立てるような言葉に、カイは立ち上がる。
『ハヤクシナイト王ゾクガ死ヌシ、アイツモ甦ルヨ。国ガホロブヨ、カエティス』
尚も不明瞭な声に、カイはまた眉を寄せた。
「ちょっと待った。それはどういう意味だい? アイツならここで封印してるし、俺は一歩も出ていないんだよ」
『イチド出タ。コウシャクノ娘ヲタスケニ。ソノトキケッカイガユルンダ』
何処からともなく聞こえる声の言葉に、カイは目を見開いた。