公爵の娘と墓守りの青年
「……あ。それは……ちょっとマズイなぁ……。あの時かぁ。でも、封印は解けてないよ」
困ったように頭を掻き、カイは声に言う。
『ホンノスコシダケ、トケタ。アイツノ一部ガ出タ』
「……ちょっとどころか、かなりマズイなぁ」
空を仰ぎ、カイは息を吐く。
そこで、ふと疑問がよぎった。
「って、何で君がそのことを知ってるんだい?」
人なのかよく分からないが、カイはとりあえず『君』と呼び、問い掛けた。
『ズット、カエティスヲ見テタ。神カラタノマレタ。女神モ知ラナイコトダヨ』
「神って……ええっ?!」
驚いてカイは声を上げた。夜中とすぐ思い出し、慌てて口に手を当てる。
近くで眠っているイストとビアンに目を向け、起こしてしまったかを確認する。
「良かった。ちゃんと寝てるね……。あのさ、ちょっと申し訳ないけど、奥に行ってもらってもいいかな? 声を上げちゃって、起こしてしまいそうだから」
墓地の更に奥を指差し、カイは声にお願いする。
『カマワナイヨ』
「ありがとう。で、出来れば、姿を見せてくれないかな? 俺、何処に顔を向ければいいのか分からないからさ。あと、出来れば、名前も教えて欲しいな」