公爵の娘と墓守りの青年

「隣にあるせいで、何を勘違いしたのか、俺の部屋にも何かあると考えて入る奴が結構、いるんだよ」

家具しかないのに、と付け加え、レグラスは説明する。

「ふーん。じゃあ、入らない方がいいね。まぁ、入る気ないけど。とにかくさ、カエティスの過去を早く見せてもらえない?」

興味が失せてしまったのか、エマイユはレグラスを急かす。

「はいはい。それじゃあ、俺が扉を開けたらさっさと入るんだぞー?」

そう言いながら、レグラスは扉の取っ手を掴み、大きな赤い扉の片方を引く。
ゆっくりと大きな赤い扉が開かれる。
扉の向こうは光が溢れているのか、白くて何があるのか何も見えない。

「はい、皆、入った、入った」

大きな赤い扉の片方を閉じないように持ち、レグラスは急かした。

「入ったかー? それじゃあ、適当な時間で飛ばしていくからな。それと、何も起きないと思うけどさ、何かあったら叫ぶように。いいな?」

「分かりました。レグラス、本当にありがとうございます」

「ネレヴェーユちゃん、お礼は後でいいから、行ってらっしゃ〜い」

可愛らしく頭を下げるネレヴェーユに、レグラスは早口で言い、手を振った。
そして、扉をゆっくり閉めた。

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