公爵の娘と墓守りの青年
「うん、死んだ人。でも、魂はもう肉体にはなくて、空に行ってしまってる。だから、意思もなく、感覚もないはずなのに、何か目的があるかのように、この墓地を歩き回っているんだ」

悲しげな表情を浮かべ、カイは説明する。
説明の合間にも呻き声は響き、ゆっくりと足を引き摺ってこちらに近付く音も聞こえる。

「あ、あの……それはつまり誰かが動かしているってことですか……?」

呻き声と近付いてくる足音に、リフィーアは怯えながら尋ねた。怖くて、カイのマントの端を掴む。

「多分ね。墓守りとしては、静かに眠らせてあげたいのにね……」

言いながら、カイは横に立つビアンを見た。
相棒はいつの間にか、口に柄が太い長い物をくわえていた。よく見るとシャベルだ。

「ありがとう、ビアン」

小さく笑い、カイはビアンからシャベルを受け取る。
シャベルの掬う部分を地面に立て、ビアンの頭を優しく触れる。


「それで一体何を……?!」

シャベルの柄を持って、まっすぐと前を見据えるカイに、リフィーアは眉を寄せた。

「うん、それは見たら分かるよ。リフィーアちゃん、危ないから少し離れててね。ビアン、リフィーアちゃんをよろしく」

安心させるように微笑み、カイはマントの端を掴むリフィーアの手を優しく離した。
カイの言葉にビアンは牙を見せ、リフィーアに近付いた。
困惑顔のリフィーアをよそに、カイは彼女と相棒から少し離れた位置に立った。

何度かシャベルを振って、感触を確かめているように見えるカイの後ろ姿をリフィーアは見た。その顔はまだ困惑顔のままだ。

「ビアンさん、カイさんは何をしようとしているんですか?」

喋れないのは分かっていながらも、リフィーアは狼のビアンに尋ねた。
もちろん、ビアンは何も喋らず、尻尾を振るだけだ。
呻き声は尚も響き、徐々に近付いてくる。リフィーア達のところへ近付いてくるにつれ、呻き声はただ低く「ウゥゥゥ」と唸っていることが分かったが、人間が発する声とはかけ離れている。
呻き声と足音は聞こえるが、まだ姿が見えない分、とても怖くて堪らない。
リフィーアは身を強張らせ、近くの木に縋りついた。
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