公爵の娘と墓守りの青年
呻き声を上げている者は、まだ現れない。
聞こえる足音もとてもゆっくりで、どこかおぼつかない。
いつものことなので、カイは何度かシャベルを振るい、金属の部分を地に刺して相手を待つ。
「今回のは俺狙いかな。それともリフィーアちゃん狙いかな」
離れたところで待つリフィーアに聞こえないように、カイは小さく呟く。相棒のビアンには聞こえているだろうから、彼も警戒して耳をそばだて、周囲を窺っているはずだ。
それから程なくして、呻き声を上げている者の姿が見えてきた。
古く、色も薄れ、所どころ穴が空いた昔の衣装を身に付け、皮膚もただれていて生前の容姿は分からない。
世間と関わりが少ない墓守りとしては、現在の衣装や流行もよく分からない状態だが、呻き声を上げている者の衣装から判断してニ百年は前の人だろうと思う。
「相手はどう出るかな……」
息と共に洩らし、ゆっくりとした足取りでやって来る呻き声を上げている者をカイは見遣る。ゆっくりとやって来る者の抜け落ちそうな目と合った気がする。
その時――……。
先程のゆっくりとした足取りと打って変わって、呻き声を上げ、駆けるようにカイに突進してきた。
「えっ、いきなり走るんだ?!」
驚きの声を上げ、カイは突進してきた者を避ける。