BeAST
俺は顔を変えることなく丞さんを見つめる。丞さんは根負けしたように口を開き、クッキーを咥える。
俺はもうひとつクッキーを取り出し、次は自分で食べる。
指についたクッキーのカスを舐めとって葉賀さんを見る。
「すげえ美味い。あざす」
そう笑って、フードを被って店を出た。
はあ、とため息をつく。
俺が普通の女だったら、丞さんを幸せに出来たんだろうか。
あんな顔させないで済んだんだろうか。
でも、ここで切らなきゃ、もっと傷付けるのは分かってる。
もう、会いたい。
触りたい。
声が聞きたい。
笑った顔が、見たい。
コンビニで温かい缶コーヒーを買って、近くの公園のベンチに脚を抱えて座る。
環と話したベンチ。
あの時も泣いたな。
大切な人の気持ちに答えられない、痛み。
今回は、あの時より痛みが強い。
「…ぅ」
自分を好いてくれて、俺も好きで。
でも俺は、ほかの男のもとへ行く手伝いをさせるんだ。
嫌になるだろ、そんなの。
でも、俺は他を捨てられない。
捨てたら、何もかも終わりなんだ。
そんな俺を受け止めて甘やかしてくれだなんて、そんな虫のいい話ねえよ。
いくら、恋愛経験がない俺だって、それくらい分かる。
好き同士は、お互いを幸せにするためにあるべきなんだ。