BeAST




そのあと、丞さんは何も言わずに部屋を移動して個室で俺のヘアメをしていく。


時々葉賀さんがアシストしに来てくれる。

スルスルと効率よく動く手。


鏡越しに見る丞さんの姿は、元気なさげだけど、それでも仕事に集中してる。


俺への心の扉閉じたかな。

ツキツキと痛む心に目を瞑る。

その痛みが愛おしいとも思える。


これでいい。


「出来た」


目を開けた時には、髪の長さは胸より少し長いロング。前髪はワックスでかきあげスタイルになってる。


「さんきゅ丞さん。」


立ち上がり、丞さんが開けてくれる扉から出る。


レジに行って、葉賀さんに会計をしてもらう。


「明日、16:30においで」

少し離れたところでタブレットを見ている丞さん。


「分かった」


お釣りを貰った時、


「ひ、おりく…いや、灯織さん…?」


髪が長いから、どう呼ぶべきか困惑している葉賀さん。


「どっちでもいいっすよ」


「あ、あの、これ。さっきのお詫びと言っちゃなんだけど」


そう言って透明のラッピング袋に入ったクッキーを貰う。

受け取って、少し考えて。



「丞さん」


俺が呼ぶとこちらを見る丞さん。手招きすれば、ゆっくりこちらに来る。


袋からひとつクッキーを出して、


「あ」


丞さんの口元に差し出して、口を開けてみせる俺。


ピクッと眉を顰める丞さん。


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