鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「僕が連れていってあげるよ。
荷物は……それだけかな?
君が守ったおかげで、落ちたのはないみたいだ」

「あっ」

ひょいっ、と私から荷物を取り、手を引いて彼は歩きだす。

「ついでに眼鏡も、僕が選んであげるよ。
どうせそれじゃ、わかんないでしょ」

「えっ、あっ」

くすくすと軽く笑う彼に連れられて、道を歩く。
五分もしないうちに、目的の眼鏡店に着いた。

「うーん、どんなのがいいかな?
ちょっと顔、よく見せてもらえる?」

「ダメ!」

彼の手が私の顔を隠す前髪に触れた瞬間、払いのけていた。

「あ……」

失礼なことをしてしまった。
けれど、分厚いカーテンのような前髪を触られるのは、苦手というよりも嫌なのだ。

「あー、うん。
ごめんね、なんか気に障るようなことしちゃって」

悪いのは私の方なのに彼があやまってきて、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「ごめん、な、さい」

「いいよ、いいよ。
誰だって嫌なことはあるからね。
僕は、寝起きの顔を見られるのが嫌いだよ」

軽い調子で話しながら、彼は眼鏡を選んでいる。
いつもみんな、怒るか鼻白むかなのに。

「さて。
これがいいかな?」

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