鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
すぐ至近距離にまで彼が眼鏡を持ってくる。
形はいままでかけていたボストンと似たり寄ったりだったものの、……色が。
スモーキーピンクとチョコレート色のコンビネーションは可愛いが、それが私にあうとは思えない。

「色が白いし、ピンクとか映えていいと思うんだよね。
でもそれだと子供っぽくなっちゃうから、ダークブラウンで引き締めて知的な大人っぽさを演出。
さらに苺チョコレートみたいに可愛いし」

彼の理屈はあっているが、最後の可愛いは絶対、私に向いていない。

「気に入らなかったかい?」

まるで犬なら、くーんなんて鳴き声が聞こえてきそうな声で言われ、良心が痛んだ。
さらにさっき、彼の手を払いのけてしまった罪悪感もある。

「あ、いえ。
これで大丈夫です」

そもそもにおいて、眼鏡のデザインなんてどうでもいい。
見えさえすれば。
だいたい、ひとりで適当に選ぶつもりだったし。
なら、きっと似合わないこの眼鏡だってなんの問題も無い。

「なら、よかった」

彼の声はなぜか、嬉しそうだった。

カウンターへ行って購入手続きをする。
注文カードは店の人が簡易眼鏡を貸してくれてなんとかなった。

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