鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
ううん、きっとこれはそれだけじゃない。
神月さんが私の心を満たしてくれたからだ。
私はこれで、もっと前へと踏み出せる?
「可愛い、苺チョコちゃん」
ちゅっ、と神月さんの唇が、前髪――傷痕の上に触れる。
それがなんだか、くすぐったい。
前は変なことを言う人だ、としか思えなかったのに。
「遅くなったけど、ランチにしよう。
エリザベスの料理は美味しいんだ、期待していいよ」
神月さんが、私の手を取った。
遅いランチは、庭の四阿に用意してくれた。
しかも重めの、アフタヌーンティ形式で。
こんな憧れのイギリス生活、みたいなのいいのかな。
「苺チョコちゃん、美味しいかい?」
テーブルに頬杖をつき、神月さんはうっとりと私を見ている。
それにうん、うんと何度も頷いた。
こんな美味しい食べ物があったんだ! ってくらい、エリザベスさんの料理は美味しい。
私と同じ年くらいに見えるのに、凄い。
「よかった」
にっこりと笑い、ティーカップを彼が口に運ぶ。
それはとても絵になった。
「ん?」
急に、彼の首が僅かに傾く。
それで、見とれていた自分に気づいた。
「……なんでもない、です」