禁断の味はチョコレートのように

『どうしてこんな場所に私を連れて来たんですか・・・・・・』

どうしても川島に会いたくて利奈に利用されたのだろうか。
杏はここに来たことを悔やんでいた。

急に杏の口に何かが押し込められ、驚いてその手の主を見る。

「ただのチョコレートだよ。あまりに思いつめた顔をしていたから。
ほら、これはホットミルク。
ごめん、色々と攻めすぎた。君が混乱するのも無理は無い」

口の中にはミルクチョコレートの濃厚な甘さが広がり、目の前で湯気を浮かべる耐熱グラスのマグカップに入ったホットミルクを飲むと、肩が下がってどれだけ無意識に肩に力を入れていたのかがわかる。

いつの間にか用意されていたチョコレートにホットミルク。
こういう事を翔太がしていたことなど杏は気付かず、そしてその気遣いに気が緩みそうになってきた。

翔太も杏の表情が柔らかくなっているのに気づいていた。
攻めすぎるのも問題だが、緩急はつけるべきだ。

「明日、純粋なお出かけをしよう。
大丈夫、部屋に連れ込んだりしないから。
もちろん、君が求めれば別だけれどね」

「そんなことしません!」

杏は出かけること自体を拒否しなかった。
その距離感を翔太もわかっている。

「では住所を教えてくれるかな」

身体が密着しそうなほど側にいる翔太からは、きつい香水の匂いなどは無く爽やかな整髪料のような匂いだけ。
たったそれだけなのに、その香に杏はクラクラしそうになってしまう。
そして杏は小さく頷くと自分の住所を翔太に伝えた。

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