禁断の味はチョコレートのように
「気になってることは後で答えてあげる。
今はせっかくのデート、楽しむことが優先。
食事後はどこに行こうか」
「ペンギンとかみたいです」
「良いね。
近くにカバもいるんだけど、あそこは近づき過ぎちゃ駄目だよ」
「どうしてですか?」
「排泄物を振りまくから」
「食事中です」
眉間に皺を寄せた杏に、ごめんごめんと翔太が笑う。
だけれど子供のように、安いうどんを美味しいと頬張る翔太を見て、昨日の出来る男の姿からのギャップに杏はこれも戦略なのだろうと思いつつ悪い気がしない。
翔太はそんな杏を見て目を細める。
彼女と過ごしているのは心地良い。
そんな彼女は今、楽しさとその反面冷静さで気持ちは揺れているだろう。
それで良い。これからゆっくり染めれば良いのだから。
翔太はこうやって女性を甘やかすのが好きだ。
それも自分が選んだ獲物をゆっくりと味わうことが。
急いでも何も得られない。
相手に寄り添い、安心を与える。
彼女たちが自分といることで他の顔を見せる、それは翔太にとって楽しみだ。
いつもはツンとしていたり肩肘を張る女性が、自分の側では子供のように甘え笑う。
そういうのが楽しいとわからない男は、翔太からすればレベルの低い男と思っていた。
海辺の動物エリアに移動し、その頃には杏は完全に気を許してしまっていた。
安いうどんも、子供ずれと混ざって楽しむ動物園も本当に楽しい。
翔太が動物が好きというのを裏付けるように、杏の質問に詳しく答えてくれ、わからなければすぐさまスマホを出して調べる。
飼育員が質問を受け付けるところでは、子供に交じって質問するので杏は驚きつつもその姿勢に感嘆する。
知りたい、その欲求が翔太は強い。
それがわかると、だからこそ社長などがやれるのだろうと納得してしまっていた。