禁断の味はチョコレートのように


「橋本翔太です。少人数ですが会社を経営しています」

そう言ってスーツの内側から名刺入れを出し、利奈と杏に手渡した。
だが杏はその名刺を見て違和感を抱いた。

これは会社の名刺では無い。
そこに書いてあるのは名前と年齢、そして連絡先だった。
『橋本翔太 34歳』
それを見た杏が戸惑ったように顔を上げ、翔太が柔らかく笑う。

「そうか、君は初めてなんですよね。
ここはそれなりの立場の男が揃っているんです。
招待制じゃなかった時代にある女性がここで知り合った男達の名刺をSNSにアップして大問題になって。
それからは招待制、そして男性は会社の名刺を渡さないで、ここオリジナルの名刺のみ使用することになったんですよ」

そんなことがと利奈が憤り、それを川島が苦笑いして落ち着かせる。

「大丈夫、僕は利奈ちゃんを信頼しているから。
もちろん杏ちゃんも。
あ、釘を刺してるつもりは無いんだ、うーん、上手く言えないね」

「それでも凄腕営業マンですか」

「仕事じゃ無いんだ、可愛い女性陣を前にすれば僕だって口下手な学生の頃に戻ったっておかしくないさ」

呆れたように翔太が言えば、川島は肩をすくめる。
そんな二人を見て杏達も思わず笑ってしまった。

「ほら、僕の手腕で可愛い笑顔を引き出せただろう?」

「結果論にドヤ顔されてもですね」

自信満々に言う川島に再度翔太が呆れるように突っ込めば、あっという間に杏達は二人のペースに巻き込まれ話を弾ませていた。

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