禁断の味はチョコレートのように
「あれ?まだ二人とも帰ってこないですね」
しばらく前に化粧室に行くと利奈は席を立ち、その後川島は仕事の電話だと席を立った。
それからもう二十分くらい経つ。
心配そうに杏がずっと二人で話していた翔太に言うと、翔太はクスリと笑う。
杏がその意味がわからずに震えたスマホを見ればそれは利奈から。
ごめんなさい急用が出来たから先に帰ります、橋本さんに送って貰ってとメールに書いてあって驚く。
「どうしたの?」
翔太に言われ杏は咄嗟に笑顔を浮かべる。流石に全て話すわけにはいかない。
「どうも急用が出来たとかで帰ったようなんです。
仕事で何かトラブルでもあったのかもしれません」
大丈夫かな、と心配げな杏に翔太は笑っているので杏は首をかしげた。
「杏ちゃんは本当にここの場所を知らずに来たんだね」
「どういうことでしょうか」
眉間に皺を寄せた杏に、翔太は指をくいくいと動かし杏に近づくようにジェスチャーする。
テーブル越しとは言え翔太も身を乗り出してきて一気に二人の距離は縮まった。
「利奈ちゃんは川島さんといるよ、この下の部屋にね」
だが杏はそれでも意味をわかっておらず不審そうな表情なので翔太はまた笑ってしまう。
出会った時から沸き上がっている衝動。
久しぶりの相手はこの子だ。
翔太は既に決めていた。
後は何も知らない子羊をゆっくりと育てていくだけ。