禁断の味はチョコレートのように
「この場所はね『異業種交流会』という名の出逢いの場なんだ」
「それは知ってます」
「君は人脈作りの場と思ってるだろうけどね、ここは男女の出会いの場。
それも男は全員既婚、女性は既婚未婚問わず。
そういう相手との出会いの場なんだよ」
勢いよく杏が後ろに下がった。
慌てて周囲を見れば、確かに男女の距離があまりに近いどころか身体を密着させている。
そして大分人数が減っていることにも気付いた。
「男達はここのホテルに大抵部屋を取ってる。
お互い合意すればそこに移動するんだ。
もちろん仕事の話やたわいない会話で解散することもある。
まぁ普通はそのまま男女の仲を深めるんだけどね」
杏は表情を強ばらせていた。
川島達に会ったとき、無意識に二人の左手薬指を確認した。
指輪は無い、独身なのだと勝手に思い込んでいた。
だがここがそういう場だったなんて。
それも男性が全員既婚、それはいわゆる不倫相手を見つける場所。
それを知って杏は目の前の翔太を凝視してしまった。
翔太は真実を知らされ震えている杏にゾクゾクと身体が反応してしまう。
この子は何も知らずにここに来て、真実を知って何を考えているのだろう。
嫌悪、悲しみ、混乱しているのが手に取るようにわかる。
『一見地味に見えるがこの子は磨けば光る。
それを見つけたのはこの俺だ』
我に返り鞄を持とうとした杏の隣に翔太は滑り込んだ。
ボックス席の隣に翔太が来たことで杏は逃げる事が出来ず身を強ばらせる。