指輪を外したら、さようなら。
「あ、麻衣たちが戻ってきた。私も持ってくるけど、あきらは?」
「アイスコーヒー」
「はいはい」
あきらに子供が出来ないことを知ったのは、偶然だった。龍也との関係に気づいたのも。
あの時の偶然がなかったら、私は今も知らなかったはずだ。
手術と結婚寸前だった恋人との別れでボロボロだったあきらのそばに、龍也がいてくれて良かった。
あきらが龍也の気持ちを受け入れてくれたらと、願う。
「それで? 鶴本くんもやっぱり大きい方が好きだって?」
「え?」
私はわざとにやにやしながら、麻衣の胸を見つめた。
麻衣がニットを着るのは珍しい。身体のラインが出るから嫌だと、言っていたはず。
彼氏が出来て、気分が明るくなったためなら、いいことだ。
「千尋。顔がエロおやじみたいになってる」と、あきらが冷ややかな目で私を見た。
「ひどっ!」
「いいじゃない。大抵の男は大きい方が好きだろうし? 胸が好き、じゃなくて、胸も好き、なら問題ないよ」
さなえが飲み物と一緒に持って来たゼリーをちゅるんとすすった。
「それに、子供を産んだらしぼんじゃうんだから、綺麗なうちに堪能してもらったらいいよ」
私たち三人は、顔を見合わせた。
この前といい、今といい、どうもさなえらしくない。
「さなえ?」
「大斗を妊娠してから……シてないの……」
グズッと、さなえが鼻をすすった。
「もうずっと、キスも――」
「え!?」
大学時代の大和とさなえは、仲が良かった。見てる私たちが恥ずかしくなるくらい、いつもひっついていた。
大和はおおらかな性格に見えて、かなり甘えたで、嫉妬深い。
いつも、他の男が少しでもさなえに近づかないように、見張っていた。
結婚してからもそんな調子ではないだろうけれど、それでも、大和はさなえにベタ惚れなのは変わらないと思っていた。
飲み会の様子を見ても、そうだ。
麻衣がバッグからミニタオルを取り出し、さなえに手渡した。さなえがそれで涙を拭う。
「大和から誘われたりしないの?」
日曜のランチタイムに堂々と話せることではなく、私は少し小声で聞いた。
さなえが無言で首を振る。
「さなえからは?」
首を振る。
「寝室は? 一緒?」と、あきらが聞いた。
首を振る。
「大斗の夜泣きとか、私以外を受け付けない時期があって、寝室を別にしたの。それから、ずっと別で……」
「え!? そうなの?」と、麻衣が驚いて言った。
「最近の夫婦には多いみたいよ? 寝室を別にして戻せないままレスになるって。三十代の夫婦で寝室を別にしている割合が十五パーセントだって聞いたことがあるわ。寝室が一緒でもベッドか別っていうのが五十パーセント、同じベッドで寝ているのは三十パーセントなんだって」
「へぇ……」
普通に、驚いた。