指輪を外したら、さようなら。

「一度すれ違うと、言い出しにくいって」

「そういうもの?」

「そもそも、どういう夫婦関係だったかにもよるだろうけどな? 他の奴は、子供が出来ても変わらないって言ってたし」

「ふぅん……」

「ずっとご無沙汰だったけど、二人目が欲しくなってセックスレス解消されたって奴もいるし」

 男でもそういう話をするんだ、と思った。

 大和も龍也と陸には愚痴ってたみたいだし。

 比呂も私とのことを話しているのだろうか。

 私はさなえと麻衣に話せない。

 軽蔑されたくないから。

 けれど、案外比呂はサクッと話しているのかもしれない。



『愛人がいるんだけどさぁ……』とか?



「お前、『結婚て面倒臭い』とか思ってるだろ」

「え?」

「面倒なことばっかじゃないからな?」

 比呂のことを考えていたとは、言えない。

「ま、俺が言っても説得力ねーけど」

「ホント」

 冷麺を食べ終えると、比呂がそそくさとシャワーを浴びた。

 いつもの日曜なら、泊らせない。月曜の朝早くにマンションに帰らなければならないから。スーツの替えは置いていないし。

 けれど、今夜は何も言わなかった。

 帰って欲しくなかった。

 私もシャワーを浴びようと、着替えを取りに寝室に行こうとしたら、比呂が背後に立った。

「比呂?」

「パーカーどこだっけ」

「ああ、それなら――」

 言いかけて、ハッとした。

 布団の中だ。

 昨夜、着て眠ったから。

 ベッドは、朝起きた時のままで、布団ははぐられていない。

 比呂は着替えを箱に入れて、クローゼットの隅に置いていた。勝手に。

 だから、箱に入っているはずのパーカーが布団の中にあったら、それはおかしいと思う。

「洗濯……しようと思って、まだしてない……かも?」

「洗濯かごの中、空だったぞ?」

「そうだった? そのうち出てくるでしょ。寒いなら暖房上げて――」

 なぜそうしたのかはわからないけれど、比呂が布団をはぐった。そこに、パーカーがあることを知っているかのように。

「あった」

「ホント? あ、私シャワーに――」

 取りに来たはずの着替えも持たずに部屋を出ようとして、背後から抱きすくめられた。

「比呂!」

 比呂の手が私の服の裾をたくし上げ、有無を言わさず両手を上げさせられた。するすると袖を抜かれ、インナーのキャミソールと一緒に脱がされた。

「シャワー――」

 そのままブラも外されると思ったら、身体が布に覆われた。

「ほら、袖通して」

「は?」

 比呂が私の腕を持ち上げ、袖を通す。そして、ファスナーを上げた。ブラが見えないギリギリのところまで。

 くるっと身体を百八十度回転させられる。

「こういうのあんま興味なかったけど、いいな」

 素肌に比呂のパーカーを着せられ、マジマジと見られると、真っ裸を見られるより恥ずかしくなった。

「ばかっ!」
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