指輪を外したら、さようなら。

 さなえとのレス解消でからかわれた仕返しか、大和が龍也の寝不足の原因を嬉々として問い詰めた。

「ま、金曜の夜だしな? 暴走しちまうこともあるよな」

「どんな女だよ? 真面目なくせに、長続きしねーよな」

 あきらは、しれっと梅酒を飲み干す。

 その様子を、頬杖をついて見ていると、目が合った。が、すぐに逸らされる。

 龍也にばかり気を取られているけれど、私とも気まずい会話以来だと気づいたらしい。



 まったく……。



 私はボタンを押してウェイターを呼び、各自お代わりを注文する。

 今夜は、みんなペースが速い。

「デキてません」と、龍也が言った。

 勝手にホッとした自分を、殴ってやりたい。

「マジで好きな女、いるんで」



 お――――!



 期待通りの展開になるのではワクワクしていると、またあきらと目が合った。私とは正反対に、緊張しているのがわかる。

「お! 珍しいな、龍也が恋バナなんて。脈、ありそうか?」

「ありそうれす! けど、素直じゃないんで、なかなか認めないんですねぇ。どうしたらいいれしょう、先輩」

「そりゃ、好きだって言いまくるのが一番だろ! 男は直球勝負!!」と、大和が得意気に答える。

「いや、疲れるだろ、それ。最初は喜んでも、段々重くなるヤツだろ」と、陸。

「じゃあ、お前ならどうすんだよ」

「『待つ』つって、ドロッドロに甘やかす。尽くされて喜ばない女はいないだろ」

「うわー。わかってないねぇ」と、私は手をブンブンと振りながら、呆れたように言った。

「男っ気のない千尋に言われたくねーんだけど?」

「えー? 千尋、恋人いるでしょ?」と、麻衣。

「この一年くらい、お肌艶々だし、すっごい幸せそうだもん」

 まさかの一言に、フリーズしてしまった。

「はっ!? マジ? じゃあ、やっぱ千尋のおススメはお肌艶々効果のある、濃厚セックス? 身体から攻略するってか?」

 大和はもはや、エロおやじと化している。

 麻衣が、軽蔑の眼差しを向けている。もちろん、大和は気づいていない。

 さなえが一緒なら絶対に言わないのだが、今日は完全にハメを外している。

「だってよ、龍也! とりあえず、訴えられない程度に押し倒せ」

「あーーー……、それはナシで。俺としては、なんなら一生レスでもいーから一緒に居てくれって土下座でもしたい気分れす」

「つまり、ヤッちゃってるってことだ」

「セックスはさせんのに、恋人にはならないって? セフレの関係が楽だって奴も多いみたいだけど、そんな感じ?」

 目の前に本人がいると知らないとはいえ、散々な言われように、さすがの私も苦笑いしてしまった。

「違います! 本気の恋愛に臆病なだけです。悪女(わる)ぶってるけど、本当は俺以上に一途で、優しいんです!」



 よくわかってるじゃない。



「龍也にそこまで想われるなんて、幸せだねぇ」と、麻衣は目に涙を溜めて微笑んだ。

 麻衣は時々、泣き上戸になる。

「素直になって、龍也を受け入れてくれるといいね。龍也なら、絶対大事にしてくれるんだから」

「麻衣ひゃん……」

 感極まって、龍也まで涙目。

 やけくそか、あきらはわずかずつ残っている料理を平らげている。



 ホント、素直じゃないんだから……。



 タコのカルパッチョを噛みしめたあきらが顔を上げ、三度目が合う。



 いーこと、思いついた。



 いたずら心に火がつく。



 私が一肌脱いであげましょ。


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