CROSS LOVELESS〜冷たい結婚とあたたかいあなた
ガシッと腕を掴まれ、強引に立ち上がらせられた。
意図を見抜かれていた、という恐怖から、蓮さんの顔をまともに見ることができない。
でも、こうなってよかったのかもしれない。
確かに玲さんや美香の身勝手な振る舞いに頭に来て、見返してやりたい!と勢い込んできたものの…身体が暖まり冷静になれば、自分まで同じ穴の狢にならなくていい、という考えになった。
「ごめんなさい……やっぱり……無理よね。私は、あなたを利用しようとしていた。最低だわ……こんなつまらない女、誰も…だ、抱こうなんて思わないわよね」
美香のように綺麗で明るい女性なら、誰も彼もが蜜に群がる蝶のようになるのだろう。私はせいぜい道端の草と変わらない雑草の花。地味で誰も振り向かない。
「……お風呂、ありがとうございました…部屋に戻ります…」
ペコリ、と頭を下げて蓮さんの脇をすり抜けようとした。
だけど。
蓮さんに肩を掴まれ、身体を反転させられて壁に押し付けられた。
「れ、蓮さ…ッ」
彼の鋭い瞳が近づいた刹那、唇にまた柔らかくなにかが当たる。
彼にキスをされた、と認識した時には壁を背に身体が両手で閉じ込められ、逃げ出せなくなっていた。
何度も、何度も。
雨のなかのキスとは比較にならない濃いキスを繰り返され、頭が真っ白に……なにも考えられなくなる。
シャワーの中で散々私の唇を喰んだ蓮さんは、耳元で囁いた。
「……今更、逃がすと思う?」
「……っ」
ぱくりと耳たぶを軽く噛まれ、そのまま舌で嫐られる。頭が、のぼせたように熱くなった。