聖夜に舞い降りた灼熱のサンタクロース
海馬から消し去ったはずの情景が、セリフが、一言一句、鮮明によみがえった。

そして──。



『髪型は、やっぱり上げたほうが合いますか?』

『そうだね。清水くん、綺麗な顔してるし。思い切って眼鏡も外してみたら? きっとお友達もドキッとすると思うよ』

『あっ、いや……そういう意図は、全然なくて……』

『あ、違った? ごめんね。あまりにも嬉しそうに話すもんだから、てっきりデートなのかと……』



田尻先輩とのやり取りも、一から全部掘り起こされた。


バスの中でのセリフは、全て本心だ。

耳に負担をかけないよう、夜は基本外しているし、ズレるたびに直すのも面倒。

伊達だけどUVカットレンズなので、専門店の帽子ほどではなくても、それなりの値段はする。


話せば話すほど逆に怪しまれると思って、それ以上は言及しなかったけど……せめて「デートではありません」と否定しておくべきだった。


そもそもデートというのは、お互いが、相手に恋愛的な好意を持った上で会うもの。そう。好意は好意でも、恋愛的な意味。

もちろん、彼女は人間としても女性としても、非常に魅力にあふれている。先輩からも後輩からも、教授からも好感度が高い。

ただ、俺が抱いているのは敬愛なので、どちらかというと友好的な意味合いが強い。
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