年下男子は恋愛対象になりますか?
あと数十分で目的地──終点ということもあって、この車両には数えられるぐらいの人数しか乗っていなかった。

あれから隼人君は寝ていない。
水族館やプラネタリウムの話をしたり、写真や動画を見せてもらっていたら、あっという間に時間が過ぎていた。

東京を出発してから続いた、しばらくの無言が嘘のよう。

「あ、もうすぐ日付が変わりますね」

隼人君がスマホから腕時計に視線を移す。
全体的に黒いので、白い秒針が目立っている。

私も自分の腕時計の秒針を見つめた。
黒と白の色違いで買ったペアウォッチ。私のは黒い秒針が目立っている。

「明けましておめでとうございます。こうして由夏さんと過ごせて嬉しいです」

「うん、明けましておめでとう。無事に年越し出来たし着くまで寝たら?あんまり寝れないかもしれないけど、少しは疲れが取れると思う」

「もう眠くないので大丈夫ですよ。心配してくれてありがとうございます。嬉しいです」

短時間に「嬉しいです」を2回言われた。
お互いに笑っている。でも、今年もよろしくとは言われてないし、言っていないわけで。

戻れているようで、戻れていない。
そんな距離感。



電車を降りたら空気が冷たく感じた。
いつも何気なく暮らしている街は、東京より寒いんだと改めて思う瞬間でもある。

改札を出てすぐ、邪魔にならない場所で隼人君が足を止めた。

「どうしたの?」

「あの、このあとは俺の家に向かってもいいですか……?由夏さんと一緒にいたいです」

私の最寄駅までの電車はとっくに終わっている。帰るとなるとタクシーしかない。
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