砂浜に描いたうたかたの夢
『いくら才能があっても、放置していたら宝の持ち腐れ』

『ダイヤモンドの原石を見つけても、磨かなければただの薄汚い石。輝きを放つこともできない』

『綺麗な花の種があっても、植えて育てなければ芽は出ず、水をあげなければ開花する前に枯れてしまう』

『落ちた人も大勢いる中で合格したのなら、そのチャンスを掴むべきだ』



父だけは、進学校に行くことを強く勧めていて……。



「それで、諦めちゃったの?」

「うん。学校が別でも、地元にいるからいつでも会えるし。でも……ちょっとナメてたんだよね」



幼い頃から勉強も運動も卒なくこなせていたのもあり、高校でも上手くやれるだろうと呑気に構えていた。

しかし、それも最初の1週間だけ。授業が始まった途端、出鼻をくじかれた。


宿題はもちろん、小テストは毎日。授業も進むのが速く、復習しないと着いていくのが大変。

幸い赤点は回避できているものの……長期休暇の宿題を毎年最終日までやるはめになるくらい、計画を立てるのがとにかく苦手で。

最初の1ヶ月は、趣味が手につかなくなるほど、毎日が目まぐるしかった。
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