砂浜に描いたうたかたの夢




「本当に、今日はありがとうございました」

「いえいえ。力になれたのなら光栄です」



弱い日射しが降り注ぐ午後5時半。誰もいない高台で深々とお辞儀をした。

愚痴を聞いてもらって、励ましてもらって。さらには手までスケッチさせてもらって……何から何までお世話になってしまった。



「明日の分は考えてるの?」

「いや……まだ」



とはいえ、夏休みはまだ3週間弱。ネタがありふれた地元に帰るのは4日後なので、その場しのぎでは終われない。

あと他にあるのは……食べ物系? 毎日3食のご飯とか? でも、それこそネタ切れだって思われちゃいそう。

かといって、セミの抜け殻には頼りたくないし……。



「まぁ、この辺でいったら海しかないもんね。街に行ってみたら何かあるかもだけど」

「街? 新幹線の駅があるところの?」

「いや、そっちじゃなくて、毎日買い出しに行くほうの。あそこ、町の中心部にショッピングモールがあるんだよ」
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