砂浜に描いたうたかたの夢
「良かった。迷わなかった?」

「大丈夫。地図で何度も確認したから。枕見てたの?」

「うん。今使ってるやつが全然合わなくて。もう3週間以上経つのに、一向になじまないんだよ」

「3週間も⁉ 早く変えなよ!」



違和感を放置する彼を心配するあまり、大声を上げた。

しまった、周りに誰もいないからって。約束してたのに……。



「ごめん……」

「ううん。こっちこそ心配かけてごめんね。そろそろ行こうか」

「っま、待って」



歩き出そうとした彼を小さな声で呼び止めた。



「あの、大変厚かましいお願いなのですが……実は今日、身内も一緒に来ていまして」



口ごもりながら、呼び止めた理由を説明する。

身内というのは、送迎を頼んだ伯母のこと。夕食の買い物ついでにお店を見て回るらしい。


正直、一緒に来ると知った時は、少し戸惑った。

だけど、彼女は口が堅いので、仮に私達を見かけたとしても、軽々しく口外はしないだろう。

そう安心して、出かける準備を進めていたら……。
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