砂浜に描いたうたかたの夢
「ただいまー」

「おー! 智くん! おかえり!」



入って早々、1番に反応した父。智の背中越しに覗くと、赤らんだ顔が見えた。

うわぁ、めちゃめちゃ酔っぱらってる。久々に実家に帰ったからって気緩みすぎ。明日は二日酔い確定だな。



「……ん? なんか変な匂いがするぞ?」



苦笑いしていると、眉間にシワを寄せて鼻息を鳴らし始めた。

なんでこんな時に限って嗅覚が敏感になるんだよ。隣にいるジョニーよりもうるさいんですけど。

ざわつく中、隠し通すのは無理だと感じ、腹をくくって前に出ることに。



「わぁ! 美味しそう!」

「あら! 一花ちゃんが作ったの?」

「おお、よくできてるねぇ」

「もしかして、変な匂いってそれか⁉」



部屋のあちこちから声が飛び交う。


肝心のひいおばあちゃんはというと……む、無反応……。だけど、私達を真っ直ぐ見据えている。

智と再度目配せし、旗に描いた絵を見せるようにおぼんを横に回す。



「ひいおばあちゃん、白寿と百寿、おめでとう……っ!」
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