砂浜に描いたうたかたの夢
頭の中にカレンダーを思い浮かべ、1ヶ月ずつめくっていく。


ここ1年間は……なかったよね?

お父さんのお兄さん、伯父さんから喪中葉書が届いたことはあったけど、中2の時だったから当てはまらない。

お母さんの親戚も、誰かが亡くなったって話は聞いてないし。

みんな生きてるから違うはず──。



「……あ」



残り1ヶ月に差しかかった時、ふと思い出した。




「心当たり……ある?」

「……うん」



勉強はどうだの宿題はどうだの、毎日同じことを言われ続けていたから、日常化してすっかり忘れていた。

私の家は、いつも家族全員で食卓を囲んでいる。
だけど先月、父だけが先に食べていた日があった。


確かあの日のお父さん、スーツじゃなくて喪服を着ていた気が……。



「だけど、私もお母さんも、お葬式に出てないよ?」

「なら、遠い親戚なのかも。田舎は風習を大事にしてるイメージがあるから、それで過敏に反応したんじゃないかな」



全身の血の気が引き、体温が急低下していく。

そんな……。もしそうだとしたら、私、めちゃめちゃ不謹慎なことを……っ。
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