砂浜に描いたうたかたの夢
「どうしよう……」

「大丈夫だよ。身内って知らなかったんだから。それに何も聞かされてなかったんだし。話せば許してくれるよ」



安心させるように励ます凪くん。それでも、軽率な行動をしたことには変わりない。

私のせいで、家がめちゃくちゃになってしまって……ごめんなさい……。



「一花ぁーっ!」



自責の念に駆られていると、遠くで父の声がした。
電話を無視したからか、捜しにきたのだろう。



「ほら、呼んでるよ。行こう」

「でも……っ」

「気持ちは分かるけど、ずっとここにいるわけにもいかないでしょ?」



戻るように促され、重い腰を上げる。

申し訳なさすぎて、合わせる顔がない。
しかし、時刻はもうすぐ8時。帰らなかったらそれこそ心配をかけてしまう。

高台に戻り、向かい合わせになる。



「じゃあ、俺そろそろ行くね」

「うん。ありがとう」



お礼を言い、「また明日」と手を振って彼を見送った。


本当は一緒にいてほしかった。

けど……こんな夜に、見知らぬ男の人と2人でいるところを見られたら、ますます逆上しそうだから。

私が怒られないように、悲しまないように、気持ちを汲み取ってくれたんだよね。
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