砂浜に描いたうたかたの夢
祖父いわく、みんなが寝静まった頃に声を殺して泣いていて、最初の1年間は毎晩のように枕を濡らしていたという。

写真で見た印象からは想像もつかないけれど、現代なら大学生の年齢。社会人なら1年目や2年目。

子供から大人になる時期だもん、不安が募るのも当然だ。


苦悩を抱えながらも、数年間の厳しい訓練に耐え続けた曾祖父。現役生活を終えた後、家に戻ったが、すぐ召集がかかったため、また離れ離れに。

再び訓練を受け続けること数ヶ月──いよいよ戦地に向かう日がやってきた。

切磋琢磨してきた同期達と抱擁を交わし、戦闘機に乗り込んだそうなのだけれど……。



「向かう途中で、エンジントラブルが起きて……」



飛び立ってわずか数分後、突然エンジンが止まってしまい、海に不時着した。

高度が低かったのと墜ちた場所が海だったことが幸いし、一命を取り留め、曾祖父以外に被害者は出なかった。

のだが……全身大怪我を負い、即入院。治療を受けている間に終戦を迎えたのだという。



「どうして止まったの? 変なボタンでも押したとか?」

「いや、それはないと思う。不器用ではあったが、その分人一倍練習していたみたいだから。それに、途中までは飛行できていたし」

「じゃあ、どこかが壊れてたとか?」

「うーん、それも大破したからなんとも……」
< 179 / 322 >

この作品をシェア

pagetop