砂浜に描いたうたかたの夢
原因探しをする智だけど、私は真っ先に心情を考えてしまった。


怖かっただろうなぁ。私だったら死を覚悟して遺書を書くと思う。

でも、ひいおじいちゃんは最後まで諦めなかった。だって、もし諦めてたら陸に墜ちていたかもしれない。

人々を巻き込まないように、迫りくる恐怖と闘いながらハンドルを操縦したのかなと思うと……。



「一花、大丈夫?」

「……うんっ。早く作っちゃおう。今日中に帰ってこれなくなっちゃう」



指で涙を拭い、止まっていた手を動かして作業に戻った。

終戦後の話によると、病室で包帯を換えてもらっている最中に上官が訪れて、同期数人が空へ旅立ったと知らされたのだそうだ。



「……一花は、いきなり友達が数人亡くなったって聞かされたら、どんな反応する?」

「んー……まず疑うかな。嘘でしょって」

「俺も。葬式で亡骸を見るまでは信じられないかも」



作り上げた不格好な原付2台を仏壇の下のテーブルに飾る。
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