砂浜に描いたうたかたの夢
『一緒に戦おうと約束したのに破ってしまった』

戦友を失った悲しみから自責の念に駆られ、食事ものどを通らなくなり、退院後も毎週のように通院するばかり。

未来に希望を見出せなくなり、仲間を裏切った人間が生きてもいいのだろうかと、人生を投げ出すことまで考えたらしい。

けれど、後輩、上官、亡き戦友の家族、妻である曾祖母から叱咤激励を受け、彼らの分まで生きることを決意したという。


お鈴を鳴らして手を合わせる。


最後まで諦めず、生きることを選んでくれてありがとう。そして、命を繋いでくれてありがとう。

沢山ごちそう作って待ってるから、安全運転で帰ってきてね。


心の中で感謝を述べ、写真立ての中の曾祖父に微笑みかけた。



「ふあぁぁぁ〜っ」



その直後、場の空気にそぐわない声が後方で響いた。



「叔父さん! おはようございます!」

「おお〜っ、智くん。おはよぉ〜」



布団の上であくびをする父に冷めた目を向ける。
< 181 / 322 >

この作品をシェア

pagetop