砂浜に描いたうたかたの夢
安心させたところで、帰宅後の話、曾祖母の話に移る。


片づけようとする祖母を押しのけて手掴みで食べ始めたこと。

初めて名前を呼んでくれたこと。

今朝も、『タダシさん』ではなく、『一花ちゃん』と呼んで挨拶してくれたこと。


そして──。



「あとね! 料理の写真をプレゼントしたらすごく喜んでくれたの!」



豆腐に挿していた似顔絵付きの旗。


絵日記を書いている時、記録用に写真を撮っていたことを思い出して。

旗も気に入っていた様子だったのだけど、せっかくなら綺麗な物を贈りたいと思い、それで今朝、『買い物ついでに現像してきてほしい』と伯母と祖母に頼んだのだ。


祖母が言うには、旗と一緒に写真立てに入れて部屋に飾っているらしい。



「想像とはだいぶかけ離れた結果だったけど、凪くんのおかげで忘れられない日になったんだ。だから……」



──ありがとう。

そう言いたかったけれど、口にする度に目の前の顔が暗くなっていくのを見て、声が詰まってしまった。
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