砂浜に描いたうたかたの夢
「ごめん。嫌ならいいから……」

「いや、全然。むしろ教えてあげたいくらい。……実は、昔クラゲに刺されたことがあって。海で泳ぐのがちょっと怖いんだ」



また言い訳が始まるのだろうかと構えていたが、返ってきたのは真面目な答えだった。

そういえば……出会った日、何かに刺されてないかって聞かれたような。あれ、クラゲのことだったんだ。



「だからさっき、顔強張ってたの?」

「まぁ……うん。変なやつが浮いてないか確認してた。昨日、クラゲのニュース見ちゃってさ。ビビっちゃって」



恐る恐る海に入った理由が判明した。


凪くんも、夕方のニュース観たんだ。

砂浜に打ち上げられたクラゲに刺されて、何人もの人が病院に緊急搬送されたってニュース。

現場は違うけど、毎日海に来ているし。警戒したのかもしれない。


ってことは……あの時、恐怖と闘いながら止めに来てた……?



「申し訳ないけど、今日は浅瀬で水浴びでいい? 明日埋め合わせするから」

「うん! ありがとう」



感謝と喜びを噛みしめつつ、無鉄砲な行動をした過去の自分を深く反省した。
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