砂浜に描いたうたかたの夢
スマホの時計は午後3時30分。海に来て30分が経過したところ。

このままのんびりするのもいいけど……ずっと同じ景色を眺めるのは、正直ちょっと退屈。

ノートは置いてきちゃったし、記念写真を撮ろうにも、凪くんは写真NGだし。ボールとか水鉄砲とか、遊ぶ物を持ってくれば良かったな。



「1時間半か。それなら、今から探検に行かない?」

「探検? どこに?」

「防波堤」



行き先を明かした凪くん。おもむろに立ち上がると、砂浜に戻ってサンダルを履き始めた。



「前来た時にスケッチしたことがある場所でさ。個人的にオススメスポットなんだけど……どう? 行く?」

「行く!」



瞬時に返事をし、いそいそとリュックサックを背負う。

推しのオススメと言われたら、行く以外の選択肢はないでしょう。


案内する彼の後を追うこと数分。消波ブロックに囲まれた防波堤が見えてきた。

形は先端が二手に分かれたT字型。手前側の先端には、赤い灯台がポツンと孤立するように立っている。
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