砂浜に描いたうたかたの夢
「なに、また喧嘩したの?」

「……聞いてくれる?」

「もちろん」



優しさに包まれた笑顔。燃え盛っていた怒りの炎が一瞬にして鎮火した。


はぁ……この安心感溢れる笑顔、癒やされる。

推しだから、顔がいいからとかは関係なく、元から凪くんの笑顔には、精神を安定させる不思議な力があるのかも。


そのままお決まりの場所に移動し、叫んだ理由を話した。



「確かに朝から説教はテンション下がるね」

「でしょ? 大人だって同じことされたら気分下がるくせに。何様だよ」



砂浜に座ってブツブツと鬱憤を漏らす。


だいぶ落ち着きは取り戻したが、思い出したらまた腹が立ってきた。

少し足を伸ばして波打ち際に当たり、火照った体の温度を下げる。



「すごく分かるよ。俺も似たようなことあったから。けど……物は投げちゃダメだよ」



共感してくれて嬉しいと喜んだのも束の間、穏やかな口調で非を指摘された。



「そのボールさ、多分ジョニーくんのおもちゃだよね? 大切な物を乱暴に扱われたら誰だって悲しむよ」

「……ですね」
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