砂浜に描いたうたかたの夢
出発予定時間まで残り10分。

この家がどこにあるのかは不明だが、今急いで帰ったとしても、既に全員準備を終わらせて車に乗り込んでいるかもしれない。

約束したのに、破ってごめんなさい……。



「分かった。リュック持ってくるから待ってて」

「えっ、まさか今から行くつもり? 無理だよ、間に合わないよ」



立ち上がった凪くんに即答したら、なぜかデコピンを食らった。



「いったぁ……何するの!」

「やってもないのに無理って勝手に決めつけない。大丈夫。見慣れない場所だけど、裏道使えばすぐ着くから」



顔をしかめる私の額に触れて「ごめんね」と言い残し、障子を開けて荷物を取りに行った。

裏道使えばすぐ……? なら、意外と近所なの?
でも、さすがに10分以内は難しいんじゃ……。



「うわぁ! なんで出てるの⁉」



考えを巡らせていると、障子の向こうから驚く声が上がった。



「ポチ! ハウス! ほらっ、お願いだから入って!」
< 240 / 322 >

この作品をシェア

pagetop