砂浜に描いたうたかたの夢
年齢は私の祖母と同じ70代前半くらいで、上品な雰囲気で綺麗めの顔立ち。

もしや……。



「ただいま」

「ばあちゃ、なんで……」



目を丸く見開いて固まる凪くん。予想通り、凪くんのおばあさんだった。



「早くない⁉ 早退したの⁉」

「ううん。今日この子のシャンプーの日だったの、すっかり忘れててね。今帰ってきたところなの」



うふふとおばあさんは笑って、左手に持った荷物に視線を落とした。

こっちも話で聞いていた通り、笑い方が凪くんにそっくり。優しさが漂う柔らかな笑顔だ。



「どうりで1匹いないなと思ったら……先に言ってよ。ケージも空いてたから、逃げたか隠れてるのか分からなくてマジで焦ってたんだよ」

「ごめんね。それより……お客さん連れてきてたの?」



微笑ましく眺めていたら、凪くんに向いていた眼差しが私に向いた。



「こんにちは! はじめまして! 凪の祖母です」

「こちらこそはじめましてっ。凪くんのお友達をやらせていただいております、一花です。勝手にお邪魔してすみません」

「やだぁ、いいのよ! 凪くんと仲良くしてくれて本当にありがとね」
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