砂浜に描いたうたかたの夢
これが日本スピッツ……⁉ うるさっっ! 改良したんじゃなかったの⁉ それともこの子の性格が元気なだけ⁉



「一花、そろそろ行こう。時間なくなる」

「あっ、うんっ」



眉をひそめたまま立ち上がると、凪くんに腕を掴まれた。愛犬を宥めるおばあさんに会釈し、植物でいっぱいの庭を後にする。



「ごめん、ちょっと走るよ」

「う、うんっ」



家の敷地を出て住宅街を駆け抜ける。


急いでるのは分かるけどさ、ちょっと速くない⁉ 私これでも一応生還したばかりなのに!

小走りじゃなくて、もはや全速力ダッシュだよ……っ!


車が通っていない閑静な道路を走り抜けると、のどかな田園風景が見えてきた。

右折してあぜ道に入ったところで、ようやくペースダウン。1度立ち止まり、膝に手をついて酸素を取り込む。



「急にごめんっ。うちのばあちゃん、おしゃべり好きだから、長引くと思ってさ」

「そう、なんだ……っ」
< 244 / 322 >

この作品をシェア

pagetop