砂浜に描いたうたかたの夢
凪くんと対面で会えるのは、今日で最後なんだって気づいてしまったんだ。


ひいおばあちゃんやおばあちゃん、伯母さんとは明日も会えるけれど、凪くんとは今日を逃したらしばらく会えなくなる。

夏休みが終わったら連絡が取れるとしても、番号を交換して画面越しで交流ができるようになったとしても。

またこうやって直接顔を合わせる日が来るのは、いつになるか分からない。


“次も必ず会える”って、確信できる未来がないんだよ……。



「……俺だっていやだよっ!」



再度溢れ出た涙が頬を流れると、私の何倍もの強い力で抱きしめられた。



「まだ離れたくない、もっと一緒にいたい、このまま帰したくないよ……っ!」



思いを叫び、腕に力を込めて抱き寄せる凪くん。

水泳で鍛え上げられた背中に自分も腕を回し、ぶつけられた気持ちに全身で応える。



「だけど……一花はここにいちゃいけない。帰らなきゃいけない」



震える声で言葉が紡がれた後、私を捕らえていた腕の力が弱まった。



「だって……お父さんとジョニーくんに、ごめんねって謝る約束があるからね」
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